大家族中心の昔と違い核家族が中心の現代では、親が老後を迎えると介護が大きな問題となります。
1997年に介護保険法が制定され、ホームヘルパーなどの在宅介護サービスやデイ・サービスなどに係わる給付を受けられるようになりましたが、寝たきりの老人の介護は1年365日毎日おこなわなければなりませんので、介護をすべて外部サービスでまかなうのはまず不可能です。
特別養護老人ホームなどの福祉施設に入居するのにも、要介護認定や順番待ちなどの関係で希望通りにはなかなかいきませんし、有料老人ホームに入所するにはまだかなりの費用がかかります。
そういうわけで、多くは親の介護が必要になったら、子供家族が同居したり近くに住んで通いながら介護することになります。
子供が複数いる場合、全員が均等に親の介護を負担することは物理的に難しいので、どうしても子供のうち1人に負担がかかってしまいます。
介護は肉体的にも精神的にも非常につらい大変な仕事です。
介護は、着替えや食事、排泄、入浴など日常生活動作全てにおいて必要になります。
老人介護の場合は、介護をしたからといって良くなって急に体が動けるようになることはないので、施設や病院に入るか亡くなるまで、先の見えない中で介護を毎日続けなければなりません。
ですから介護を受ける親は、献身的に介護をしてくれる者に対して感謝といたわりとともに、相続でその労を報いてあげるべきです。
現代においては介護と相続は切り離して考えるべきではありません。
介護を頼むなら遺言書を書いてあげましょう。
財産が自宅くらいしかない場合は、介護した子供に相続させるようにしましょう。
そして、介護ができない子供たちには、預金などがあればそれを譲るようにして、それでも遺留分に達しない場合は、遺留分を放棄するように言い含めます。
遺言書だけでは、遺留分減殺請求を起こされることも考えられますから、あらかじめ遺留分は放棄させるのです。
遺留分の放棄は、相続が発生する以前でも、放棄する子供本人が家庭裁判所に行って手続きを踏めば可能です。
遺言書と遺留分の放棄の許可書(家裁が発行)があれば、相続争いは絶対起こりません。
他にも、介護をしてくれる子供に相続で報いるために、遺贈や子供の配偶者を養子に迎えるという方法もあります。
例えば長男家族と同居する場合、実際に介護をおこなうのは長男の嫁というケースが多いでしょう。
長男の嫁は相続人ではないですが、遺言書の中で遺産の一部を遺贈するよう指定しておけば、介護に対して嫁本人に直接報いることができます。
不動産を譲りたい場合は、死因贈与契約を結んで公正証書を作成しておけば、さらに確実に贈与することができます。
死因贈与なら、生前に法務局で所有権移転の仮登記をしておくことも可能だからです。
また、本人や他の家族の同意があれば、同居して介護をしてくれる子供の配偶者と養子縁組をするという方法もあります。
養子になれば自動的に相続人にもなるので、仮に遺言書がなくて法定相続分で遺産を分けることになっても、他の子供たちの2倍家族としてより多く相続することができます。
いずれにしても、介護をしてくれた者に対しての感謝といたわりを相続という形で報いることは大切です。
「介護」と「遺言書」はセットで考えておきましょう。
なお、介護や医療看護には大変お金がかかります。
医療費や入院費や各種介護サービス利用料金、電動ベッドや車椅子等の福祉用具の購入費やレンタル費用などのほか、食費(特別食)や交通費(タクシーなどを利用することも多いでしょう)などもばかにならないものです。
これら、介護や医療看護にかかる費用は、それを利用する者の財産から拠出することにし、専用口座を作っておいてそこから全て支払うようにしましょう。
そして、出費した日付と項目と金額を全て詳細にノートなどに記録しておきます。
こうしておけば、仮に介護・医療看護のため財産が目減りした場合に、介護をしていない子供たちが使い道を疑ったとしても、それを見せれば納得せざるを得ないでしょう。
自分の介護に自分の財産をいくら使っても文句を言われる筋合いはありません。