日本は超高齢社会と言われています。
高齢化が進むとともに、健康に問題を抱えた老人や認知症の患者が増加しています。
また、日本は農村部以外では核家族が一般的になり、老夫婦だけの世帯や1人暮らし老人が急増しています。
子供が同居したり近くに住んで老親の世話や介護ができればいいですが、子供にもその家族や仕事等の都合があるので、同居や近くに住むことが不可能であったり、子供のいない老夫婦も少なくありません。
そのような子供や頼れる身寄りが近くにいない一人暮らしの老人や老夫婦、さらに障害を持った方などにおすすめしたいのが、任意後見制度です。
任意後見制度とは、成年後見制度の一つです。
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が不十分な人について、契約の締結等を代わりに行う代理人(後見人)を選任して、本人(被後見人)を保護する制度です。
任意後見制度は、現在は特に判断能力に不安はないですが、将来認知症などで本人の判断能力が不十分な状態になったとき備えて、前もって信頼できる人との間で契約(任意後見契約)を結び、自分の生活、療養看護や介護、財産管理などについて、判断野力が衰えたときに任意後見人が本人に代わっておこなうことをあらかじめ取り決めておく制度です。
この任意後見契約は、契約をしたらすぐ被後見人への保護・支援が始まるのではありません。
将来本人の判断能力が低下した段階で、任意後見人や親族等が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、任意後見監督人が就任したときから任意後見契約の効力が生じます。
任意後見監督人は任意後見人の監督をおこないます。
また、家庭裁判所は任意後見監督人から任意後見人の仕事の様子を報告してもらい、任意後見監督人及び任意後見人を監督します。
このような2重のチェック機能で任意後見人を監督することで、任意後見人の権利の濫用を防止し、本人の保護を図るようになっているので、安心して制度を利用することができます。
任意後見契約
最初に任意後見契約で後見人となる信頼できる人を選びます。
任意後見人になるための資格は特になく、親族はもちろんのこと、弁護士や行政書士等の法律の専門家や社会福祉士等の福祉の専門家に依頼することもできます。
また、財産管理や医療看護など専門分野によって別々の人を選任することも可能です。
任意後見契約の締結は、公正証書で作成する必要があります。
公証役場に出向いて作成することになりますが、公証役場に行けない場合は公証人に病院や自宅に来てもらって作成することもできます。
任意後見契約の内容
任意後見人に委任する事務の範囲は、財産管理に関する法律行為(不動産などの処分・賃貸借契約の締結・預貯金の管理・相続時の遺産分割協議など)と身上監護に関する法律行為(医療契約や福祉サービス利用契約の締結など)で、本人と任意後見人受任者との話し合いで決め、代理権付与の対象となる法律行為を明確に特定し、代理権目録を作成しておきます。
なお、任意後見人ができる仕事は事務、つまり契約等の法律行為だけであって、介護サービス等の身の回りの世話である事実行為はできません。
したがって、介護サービスなどを希望する場合は、任意後見人が本人の代理人として要介護認定の申請や介護サービス業者等と契約を締結し、身の回りの世話はそのサービス業者が行うことになります。
任意後見監督人の職務
1. 任意後見人の事務を監督すること
2. 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること
3. 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること
4. 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について、本人を代表すること
任意後見監督人は、いつでも任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、また任意後見人の事務もしくは本人の財産の状況を調査することができるとしており、任意後見人の権利濫用を防止する仕組みとなっています。
任意後見人への報酬
任意後見人の報酬については契約内容等にもよりますが、専門家等に依頼する場合は月額3万円前後が多いようです。
親族に依頼する場合は無報酬とする場合も多いようですが、その場合は遺言を作成して配慮することが多いです。
任意後見監督人の報酬は本人の財産等を考慮して家庭裁判所が決定します。
任意後見制度は、知的障害者や精神障害者の親が、自分の老後や死後、子供を保護してもらうために活用することもできます。
この場合は遺言書を作成することが不可欠です。